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4.幻の祭り
「.......あった。」
親父が大切にしていた月見団子の作り方の書かれた紙。それに書かれている材料を混ぜ、作っていく。形を整え十五個の団子を三方に乗せる。それを溢さないように気をつけて運んだ。祠まで運び終わると、先ほどでの緊張は嘘のようにふっと解けた。そんな作業を繰り返していると、すぐに夕方になってしまった。
「これで月のみんなは来られるのか。」
「うん.....。作り方も間違っていなかったから、絶対に来れると思う。」
「君の誕生日のお祝いだって聞いたけど君は何者なんだ。」
「私は由緒正しい月の都の姫。竹取物語でいう"かぐや姫"。あれは私のおばあさまが今夜の祭りから月の都に帰る様子を描いた物語なの.....。この祭りがずっと続くように、ね。」
「そうなのか......。じゃあ月見石、っていうのは.......。」
「うん。あなたのお父様が作ってくださっていた、お月見団子のこと。月の都の者が一番綺麗なこの月を見にこれるためのもの。だから特別な作り方が必要だったの......。だからありがとう。本当に嬉しいわ。」
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