どん底の幸せに

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どん底の幸せに

【どん底の幸せだ】。 学校で発情してしまい逃げ込んだ空き教室で独りぼっち。 熱に浮かされた頭の中じゃ正常な判断もつかない。 「あぁ、あっ、―――んぁ、ぁ」 ぴゅっと先端から出たのは粘り気も薄くなった精液。 はぁはぁと口から漏れる熱い吐息と、なにも満たされない虚しさ…… 「…っ、なんで…、っ」 あと何回目の絶頂で満足できるのか怖くなる それにイクほどにゾクゾクと疼く、届かない確かな場所。 「…………ん、っ、おく、」 前だけじゃなくて後ろを触りたい…、触るだけじゃダメだ。奥まで突かれたい… (ダメだっ、学校でそんなこと…できるわけがない) 前だけで満足しろと頭を振った。 …っ、大丈夫だ。多分これは発情期の前に起きる発作のようなものだ。ここまで酷くなかったけど似たことは前にもあった。あとちょっと耐えていれば熱は引く、落ち着いたらこの教室を出よう。 「はぁ…っ、あと、いっかい……」 浅い息を吐きながら本能に抗う。 こうして消えない熱に何時間か犯された頃、窓の日は落ちて辺りが暗くなりはじめた。 そろそろ部活のある生徒達以外は全員帰った頃だろ… 「ーー、…、もっと、ほし…ぃ…」 何度もイッたせいだ。頭ん中がぼーっとしてきて簡単なことが判断できなくなっている。 におい、出てるかもしれない…… こんな状態で職員室にいけば絶対パニックになるだろうし、路上になんて出れば見知らぬαに犯されてしまう… (でも、したい、……気持ちよくなりたい…) 普通に考えても犯されるなんて考えただけでゾッとするのに、そっちの方が楽になれると本能に負けそうで頭の中がぐちゃぐちゃだ…。 早く教室に戻って、多少の騒ぎになっても携帯で救急車を呼んだ方がいい…… 「ひあっ!?」 ぞわっとした快楽にびくりと声を上げた。 気がつくと手は前じゃなくて後ろに伸びて、指で浅いところを弄り始めていた。 「あ、やっ……いや…っ」 (だめ、っ…そこは、触ったらダメだっ) 普段は中々濡れてくれない後孔はベトベトで柔らかくなっている…… (はっ、だめ…っ、きもちいい…っ) このまま指をもっと奥まで挿れたい… きっとそれだけでもたくさん気持ちよくなれる、楽になれる… 違う… だめだ、これをしたら止まらなくなってしまう… 「だめ…、たすけ、て…っ、 だれか、助けてッ」 床に崩れ落ちた体と情けない悲鳴 そんな俺の、か細い声を聞きつけたかのように教室の扉が開いた。 「――――」 そっから先はほとんど記憶にない。 側から見ても可哀想なαだ。助けを求める声に駆けつけて扉をあければ、Ωの発情フェロモンを浴びせられたんだ……。 好きとか嫌いとか、好みも関係ない。 理性の吹き飛んだΩのテロ行為にあてられてヒートを起こすなんて、事故だろ。 「きもち、いい…」 疲れ切った体と理性はあっけなく崩壊した。 けれど俺に犯されているとか、そんな感覚はなかった。 (貴方も同じだったらいいのにな…) せんせい……、……。 俺は目の前の"α"に縋って泣いて、あんなに嫌悪してたはずの肉欲に溺れるだけのΩに、喜んで成り下がっていた。 * * * 目が覚めれば知らない場所と布団、そして匂い… 俺がいたのは学校じゃなくて、その人の"巣"だった。 「やっぱり、君だった」 ……? まだ火照る体とαのフェロモンに酩酊するかのように働かない頭の中でも耳はしっかりその声を捕らえた。 なにが俺だったのか分かんなかったけど…貴方が幸せそうで綺麗な笑みを浮かべてくれたから、俺も嬉しいと思った。 「足りない…もっと、して……」 ちゃんと言えたのかも分からないけど、苦しくて仕方がない。 けど……、だめだ、俺がやろうとしてること…これはダメなんだって抵抗する心がまだあったのに… 「唯、大丈夫。俺が守る」 「せんせ、…、」 「怖い事もないし、苦しい事もない。君は楽になっていいよ」 「ん、…」 俺は伸ばされた手に甘えた。 幸せで、気持ちよくて、抵抗なんて言葉は浮かばない。 αのヒートがこんなに気持ちいいなんて、満たされるなんて知らなかった… 「幸せだ。君がΩで嬉しい」 ほんとうに?おれでいいのか…? 一度だって、きっとこの先も言われないだろう言葉の衝撃に、一瞬だけど冷静な俺に戻ることができた。 だから知ってた… 拒絶するなら、今しかないと分かってて 「噛んで、……」 今だけでいい。 貴方のものになりたい、と軽率で愚かな願って叶えてもらった… (ごめんなさい…) 誘ったのも この地獄を作ったのも、   俺だった。
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