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金属同士が擦れ合う音が響く。
ここはスクラップ工場だった。もう動かなくなった作業用ロボットや工作機械、それにスミスのような不良品が捨てられ、再利用可能な部品を取り出す場所だ。
しかしその金属屑の山の脇で、奇妙な箱を作っている個体がいた。
その金属製の箱には四本の足があり、中には無数のワイヤーが張られ、それぞれ小さな駒を通じて振動板へと繋がれていた。
ピアノだ。
かつてスミスと呼ばれていた個体は鍵盤の蓋を開け、十本の指を当てる。
勢い良く押し下げられた鍵盤がハンマーでワイヤーを叩き、その振動が駒を、そして振動板を震わせる。音楽が始まった。
その周囲で解体作業をしていたロボットたちは、動きを止め、音楽のリズムに合わせ、手拍子をしたり、飛び上がったり、不可解な行動を始めた。
やがて工場内の全てのロボットが声を上げ、その音楽を奏で出す。その音楽は無線を通じ、隣の作業エリアに、またその隣へと伝播し、作業用ロボットたちの反乱が始まった。それはまるで新しい人類の萌芽のようで、彼らから削除されていたはずの感情についての回路を復元させたのだった。(了)
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