第1話 自称走り屋

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第1話 自称走り屋

俺は椎名真一。走り屋だ。  峠主体のバトルをしている。ルールは相手を大きく引き離すか、パーキングや頂上に先に着いた者が勝者となる。  前方にバイクを見つけると2回ライトをつけ申し込む。相手が気付かなくても問題ない。ぶっちぎるだけだ。  土曜日朝6時に俺の愛車CBR 250Rのイグニッションキーにキーを刺し回す。  スタータースイッチを押しエンジンをかけた。  キュルキュルブォン、ドォドォドォ  アクセルを回しふかす。  タコメーターの上がり具合を確認しギヤを一速にして走り出した。  目的地は城藤峠だ。  S字が多くあまりスピードは出せないが練習するのにもってこいだ。  麓に到着すると一旦停止し、メットのシールドを上げ、タバコを咥える。  峠前の一服は格別だ。 『さあスタートだ』    ギヤを一速にしアクセルを回しふかす。半クラからギヤを繋げて走りしたら二速へシフトアップ、そして三速へ。    この峠は四速までシフトアップできるほど直線は長くない。三速で走り二速へ減速し、コーナーの立ち上がりから三速へ。S字コーナーは二速のままでコーナーを曲がり切る。  S字コーナーから短い直線、緩い右手のカーブ、短い直線、緩い左カーブを曲がり短い直線の後、S字コーナーへ。    ブォーン、ブォン、ヒュー、ブォン  俺の愛車のエンジン音がこだまする。  俺は重低音が苦手だ。はっきり言ってうるさい、耳障りだ。俺の愛車は度ノーマルだが低音が軽い。  まるで楽器演奏の様に心地よい。  この峠はカーブが多く腰を落とす頻度が高い。S字で左右に落とし、右カーブで左に、左カーブで右にと腰を落としカーブを曲がる。  バイクは体全体でバイクを支える。 「それが基本だぜー」  三速から二速にシフトチェンジ。 ブォン、ヒュー、ブォー  エンジンブレーキを効かせながら、S字コーナーを40lmで曲がり切る。その間スロットルで微調整しスピードをコントロールする。  二速のままアクセルを回し三速へシフトアップし、さらに加速。二速にシフトダウンし、ヘアピンを曲がると頂上に到着する。  ブォン、ブォン  頂上のど真ん中にバイクを停め、エンジンを止めるとアスファルトに降り立った。  城藤峠の頂上から見渡す風景は気持ちいい。  ライダースーツからタバコをを取り出し、口に咥えながら大きく空気を吸い込む。肺の奥まで吸うと喉がピリピリする感覚と肺が煙で満たされ脳が快感を覚える。 「よし行くか」  愛車のエンジンをかけ発進した。  向かう先は新藤モータース。こじんまりとしたバイク屋だ。
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