2人が本棚に入れています
本棚に追加
第11話 檜原街道
甲州街道から高尾街道、美山通り、山田通りを通り五日市街道に入る。武蔵五日市駅を左に折れまっすぐ走ると檜原街道に着く。ここまで来ると山間らしくなり民家はぽちぽちある程度だ。緩やかなカーブが続きツーリングにもってこいだ。
ウォーン、ウォン、ウォン、ウォーン
TZR250SPRのエンジン音が山間をこだまする。
上川乗交差点を過ぎ数馬に向かう。
この辺りから上りカーブや下り坂直ぐにカーブがある。
シフトダウン、アップの繰り返し。
「最高だー」
民家があるため人の飛び出しを考えるとスピードを出しづらい。が。
「もらったぁー」
片道一車線だがバイク二台で並べる程の道幅はある。遅いやつをぶっちぎるのは余裕だ
。
TZRの錆びついたエンジン音を聞きながら俺の気分は最高潮に達する。
また一人抜き更に一人抜き副部長神崎裕二のNSR250Rに追いつく。ここからが勝負だ。
ライトを2回照らしNSRの真後ろに着く。
「こいつ無闇にブレーキかけやがって」
上り下りのアップダウンとカーブの組み合わせに視界が悪い。中央線を跨ぐと対向車と衝突する可能性がある。
アウトからNSRを抜こうとするとわざと膨らみ、俺の進路を妨害する。
「くそっ!俺のビデオを観ているだけの事はある」
だが、俺はこれだけの男ではない。
インを狙いNSRがインに入ろうとした時、二速にシフトダウンしアクセル全開で腕を少し持ち上げた。
TZRはウィリーしながら方向転換し、フロントタイヤを道路に接地と同時にシフトアップ。三速で引っ張り右カーブでリアタイヤを滑らせながらNSRをぶっちぎる。
後はNSRに抜かせない事だ。
大きく曲がった右カーブを抜け、都民の森でゴールイン。
「俺の勝ちだな」
副部長の神崎は手を上げ下りの方角へむかった。もう一周するつもりだろう。
俺はメットを脱ぎタバコを口に咥える。火をつけ大きく息を吸い吐き出した。
「俺ももう一周するかな」
TZRに跨ると周りからヒソヒソ話しが聞こえる。
「おい聞いたか。また出たんだよ」
「え〜、あたし怖いよぉ」
俺は無視して走り出した。
この噂が椎名真一を震え上がらせる事となる。
最初のコメントを投稿しよう!