第6話 華麗なるNinja

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第6話 華麗なるNinja

 城藤峠入り口に差し掛かると2台のバイクが停まっていた。一台は結城達也のNSR250Rともう一台はカワサキのイメージカラーである緑色のボディだ。 「Ninjaか?」  俺は初めのS字に二速にシフトでチェンジしつこっむ。S時の立ち上がり手前からスロットルを回し加速。次の左カーブにそのまま突っ込みエンブレとリアブレーキで調整していく。  ビュン、ビューン、ビューン  乾いたエンジン音が近づいて来る。  左カーブの立ち上がり時点で真後ろに着かれ、右カーブ前で抜かれた。 「早い」  GSX250Rの低音とNinjaZX-25Rの高音がこだまし丁度良いハーモニーを奏でる。  スロットルを回し加速シフトアップ。次のS字までには追いつきたい。更に加速しS字に差し掛かると、Ninjaは俺を待っているかのようにS字手前でゆっくり走っている。  俺の姿が見えると軽やかにまるで蝶々がひらひら飛ぶかのようにS字を抜けて行った。    それ以降、Ninjaの走る姿は見れなかった。  俺の後に続いてゴールした結城達也は、Ninjaの真横に停車し、Ninjaのライダーと共にアスファルトに降り立った。  Ninjaのライダーがメットを脱ぐ姿は美しかった。 「女ぁ」 「はっはっはっ」  結城達也が笑った。 「僕の彼女ですよ」 「初めましてCBR250Rの椎名さん」 「俺が来ると分かっていて待ってたのか?」 「1週間張っていました。彼女は久月泉(きゅうげついずみ)さん。僕と同じ大学のサークル仲間であり彼女です」 「彼女を強調するな」 「はっはっはっ」  結城達也の彼女久月さんは色白では無いが目鼻立ちが良くすらっとしている。ブロンド色の胸くらいある髪が風で揺らめいている。 「今日はなぜGSXを?」 「ああ、結城。お前とのバトルで危機を感じた俺は相棒に託した」 「ほう、あのKATANAの」 「つけていたのか?」 「いえ、いえ、たまたまですよ。椎名さん思い詰めた様な顔をしていましたから、きっと何かあると思いまして」 「なるほど」 「可愛いお嬢さんですね」  クスクスと笑う久月さんは可愛い。黙っている表情とのギャップがたまらない。 「僕の彼女ですよ」 「心が読めるのかよ」 「椎名さん顔に出やすいタイプ見たいだから。で、託したCBRはいつ納品ですか?」 「一ヶ月って言ってなたなぁ」 「そう」  俯き加減で目を逸らした久月さんはぼそっと 「それじゃしょうがないわね。達也君帰りましょ」 彼女は長い髪を後ろでまとめ、メットを被った。 「おい待て!来週の土曜日だ。6時30分にここで勝負だ」 結城達也も久月さんも片手を上げ走り去って行った。 俺は新藤モータースに向かった。 「おやっさん」 「真一、お前いつもうるさいな」 「おやっさんのGSX、峠仕様にチューンしてくれ。今日Ninjaに負けた」 「当たり前だろ。チューンしているにしろ、四気筒46馬力のマシンに勝てるわけないだろう」 「だかお願いしているんだ」 「わぁかったよ」 「みゆきは?」 「お前の愛車をチューンしているよ。鼻歌混じりだけどな」  俺は格納庫のドアを開けると、みゆきは鼻歌混じりで俺の愛車をチューンしている。 「ようハニー」 「よう」 「は?」 「何よ」 「いや、愛車のチューンよろしくな」 「あいよ」 「なんで楽しそうににしているんだ?」 「真一の愛車だからよ」 「そっか。足を借りたいんだが」 「親父のバイクは?」 「峠仕様にチューンしてもらう」 「わかったわ。その辺にあるもの使って」  俺はスーパーカブに乗り帰宅した。
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