キャンパス

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キャンパス

 私はただ白いキャンバスに筆を走らせる。 他人は筆に着いた物を色と言うだろう。 私にはただの材料にしか見えない。 ただ筆に着いた何かを目の前の物に塗っていく。  私の想いがきっと筆先に着いて、それが色として出来上がっていく。 ただそれを私は、心地よく見続けるだけだ。  人はよく言う。 なんでこんな絵が描けるんだ。なんでお前は、もっと世に羽ばたかない? いいんだよ。私はただ作りたい何かを。私の気持ちを筆で現しているだけなんだから。  今日も、ある人からの依頼が来た。 「お前の中で世界一の芸術」 それを作れ。 そうか。なら。  白いキャンバスが黒く変わる。白い点があとから付けられていく。 ただ何も焦点の合わない宇宙ができる。 息が出来なくて、体が浮く感覚になる。  そして、それを白で塗りつぶした。 これは、私の芸術。 依頼人からの指示に答えた。  その白いキャンバスに依頼人の自画像を書いて渡す。 たいそう喜んでいた。  見えないところで程見える者。 いつか見つかるまで、 私の芸術は終わらない。 -・- -・ --・-・ -・-・ -・・・ ・・-・- -・--- ・-・ ・- -・- -・ --・-・ ・--- ・・-・- ・--・ -・-- ・-・-- 
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