#1 苛立ちのキス

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とある若手芸人の深夜ラジオの発言がぷち炎上しているというネットニュースの見出しが目に入ったくらいあたりでコキコキと背中を鳴らしながらようやく起き上がる。 起き上がるついでにテレビをつけると、お昼の情報番組でさっそく瀬良杏樹の電撃結婚が取り上げられているところだった。 (意気揚々とコメントしてるけどこの学者の先生、絶対瀬良杏樹と接点ないだろ) チラリとテレビの画面を一瞥した後、洗面所へ向かう。 こんな感じで俺の「朝」は始まるのだ。 ヴーーーーーと電動歯ブラシの音が洗面所に響く。 歯ブラシの振動に歯を委ねながら、今日の出勤後のプランを考える。 まずは回収してるテストの採点をやらなきゃだな。 あ、今日から新しい単元だから授業プリント作らないと。 …あー、そう言えば塾長に去年までの合格実績まとめとけって言われてたわ。 黒野裕樹、26歳。 大学時代に講師のアルバイトをしていた塾に何となくそのままの流れで正社員で入社してはや四年。 正社員と言っても仕事内容はバイト時代とさほど大きな変化はなく、変わったことといえば大学卒業と同時に配属先が地元の神奈川から東京の校舎になったくらいだ。 「おはよーございます」 「おはよ、相変わらず眠そうな顔してんね」 講師室の扉を開けると高崎菜々がインスタントの味噌汁とたまごサンドを食べているところだった。 俺と同期入社の高崎はここでは中学部の数学と理科を担当している。
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