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田舎道にポツンと佇むバス停。
その日は豪雨で雨風を凌ぐために下校中だった女子高生は近くのベンチに腰掛けて雨宿りをしていた。
彼女は鞄からハンカチを取り出し、濡れた髪や顔を拭う。
「いやぁ~今日は凄いですねぇ。びしょ濡れだ」
しばらくして、もう一人急いで屋根の下へと駆け込んできた十代くらいの若者は先客の女子高生にそう声を掛ける。
「そ、そうですね……アハハ」
突然、見知らぬ男から話し掛けられた彼女は戸惑いつつ苦笑い。きっと人見知りな性格なのだろう。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
特に会話を交わすこともなく、時間と雨音だけが過ぎてゆく。
少女は落ち着かない様子で何度も座り直し、バスの到着を待ちわびているようだった。
都会でも人手不足で困っているというニュース、田舎なら末期状態。バスの便なんて数時間に一本程度。
「……長いなぁ」
呟く男の独り言。愚痴のようにも聞こえた言葉、なのにも関わらず何故か男の視線は時刻表ではなく、隣に座る少女に向けられていた。
長い黒髪から先端に滴った雫を見て、自然と喉を鳴らしながら男は生唾を飲み込む。
彼女は気付いたのかどうか、少し男と距離を取って座り直す。
「君、学生?」
「え」
変わらず彼女の身体を舐め回すような視線でそう訊く男。
「あ、別に嫌なら答えなくて良いんだよ。こんな田舎じゃ若者が珍しくてね、俺も若者だけど」
そんなことを付け加えて出来る限り警戒を解こうとする。
「……高校生です」
鞄の紐を握り締めながら少女は答える。
返事が返ってきたことが余程嬉しいのか満面の笑みを浮かべる男。
「そっか。何歳?俺は十八歳。丁度成人になったばかり。でも酒とか賭博は二十歳からなんて嫌になっちゃうよねぇ~」
先ず、自分が答えることによって他意がないことを示す。くだらない雑談を交えながら。
「十六歳です」
少女は変に刺激をしないように一定の警戒心を持ちつつ、濁った会話を早く終わらせたい一心で口早に年齢を言う。
「へぇ~そっかぁ!」
年齢を聴くや否や下唇をペロッと舐める男。品定めでもするように。
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