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Ⅹ.心かさねて
まずは三世が回し車に飛び乗ると、勢いよく走り始めた。頭上のカウンターも勢いよく数値を刻んでいく。
「いいぞ、三世!」
カスケも応援しながら見守る。するとカウンターが560を過ぎたところで三世が回し車から転がり出てきた。
「はぁ、はぁ、もう、無理ッ! アンタの、番よッ!」
「了解!」
カスケは器用に格子の隙間を縫って角の先端を差し込むと、軽く小突くように回し車を下から上にカツンと押した。すると一押しで10回ほどカウンターを進めることが出来た。大した負担にならなかったカスケは、しめしめとばかりに何度も何度も、回し車を小突き上げた。
「やるじゃない! いい調子よ!」
気付けばカウンターは2830まで達していた。ここで三世がカスケの角を押しながら発した。
「良くやったわ、これ以上無理しないで、後は任せて!」
「いやお前、いいとこ取りだろ!!!」
「いくわよおおおお! オラララララララッッッ!!!」
今までにない強いステップで足を振り、三世はあっという間にカウンターを3000まで到達させた。
「お前、絶対一人で出来たって!!!」
カスケがそんな不満を発していると、プシュウという音とともに、ケージの蓋がパカンと開いた。
「やった! 開いたわ! ありがとう!」
「扉の鍵かと思ったら、そこが開くのか! まあいいや! やったな!」
こうして、カスケはハムステッド三世を、野に解き放つことに成功した。二匹は友情を誓い合い、また再会を約束して、明るくなる前にと別々の方向へと走り始めたのであった――。
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