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Ⅵ.飼い主からの解放条件
カスケは思った。早々にこの子ねずみに協力し、ここを立ち去ろうと。
せっかく気分良く夜半の散歩をしていたというのに、自分はおろか鹿全体にまで及ぶバッシングをされ、正直参っていたのだ。
「……わかった、協力する。何をすればいい」
「あら、心変わりしてくれたの? 賢明よ」
「いいから早く要件を言ってくれ」
「フフ、せっかちさんね。いいわ、このケージの上を見て」
カスケはケージの上部に目を遣った。そこには黒い横長の板のようなものが設置されていた。
「……この、黒いやつか」
「そう。そのモニターが、このケージの鍵になっているの」
「この籠の……鍵?」
「ここにある回し車――ハムスターホイールっていうんだけどね――を回転させることで、その上のモニターに回転数が表示されるの」
「……回し車ってのは、その車輪みたいなやつか?」
「そう、この丸い箱よ。この中で前方に走ろうとすると、実際には進まないけど回転はするわけ。その回転数によって、このケージが解錠される仕組みになっているの」
カスケは首を傾げた。意味が分からなかったのだ。
回し車を回すと、それに応じてハムスター頭上のモニターにはその回転数が示されるという。一体どのように?
「うーむ。ちょっとやって見せてくれ」
「ええ? 嫌よ疲れるもの」
「やってくれないと分からない」
「まったく……仕方ないわね、少しだけよ」
苛立った様子で鼻息をフンと吹き出すと、ハムスターは回し車に入っていった。
「しっかり見てなさいよね!」
ハムスターが回し車の中で両手足を使って走り始める。
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