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Ⅶ.回し車カウンター
ハムスターが走ると回し車も一緒に回る。カスケにとって不思議な光景だった。走っているのに進まないことも不思議だったが、走るごとにケージの上に付けられたモニターの数字が一つまた一つと上がっていく。それが一番目を引いた。
「はぁはぁはぁ……もう、いいわよね!?」
「あ、ああ。もういい」
ハムスターは回し車を降りると、水飲み場へ行き水分を補給した。そして、カスケに向かって説明を始める。
「上のモニターに数字が映ったでしょ?」
「ああ、見たぞ」
「その数字は私が回し車を回転させるごとに増える。その増えた数字がある数値を超えると、このケージが開くように作られているって訳よ」
「すごいな……魔法みたいだ。本当か、それ」
「嘘なんかのために私は走らないわ」
カスケはモニターに目を遣りながら質問を返す。
「それで、この籠が開くための数値は、いくつなんだ?」
「……それがね、ふざけてるのよ。絶対無理な数字なんですもの。性格悪いわ人間ってのは。夢だけは見させるけど、実現には達成出来ないような、淡い夢なんだからね」
「そんなにか……それで、いくつなんだ?」
「3000よ」
「え? 3000?」
「そうよ、どう、絶望的でしょ」
「いや……結構、いけそうじゃね?」
カスケの視線の先、モニターは「97」を示していた。
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