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Ⅸ.協力プレイ
カスケは溢れ出る涙に困惑しながらも、母親に初めて本気で叱られた時のような情懐を呼び起こされていた。
先程よりどこか大きく見えるハムスターを前にし、カスケは子鹿さながらに縮こまり、今晩付き従うことを決めた。
「……分かった、ここで見守ろう」
「見守る? せっかくなら手伝いなさいよ」
「分かったよ、もう何でもいいから早く帰らせてくれ」
「よし。じゃあ私が回し疲れて休憩している間、アンタは外から角でつついて、回し車を回転させてて。そうすれば効率2倍よ」
「まあその隙間の幅なら、出来なくはないか……いいだろう。お前の作戦に協力しよう」
「……あのさ、さっきから、お前って呼ぶのやめてくれない?」
「すまない、名前が分からないからな。何という名前なんだ?」
「源氏名の方? それとも真名?」
「は? よく分からんが真名だろう普通は」
「ハムステッド三世、それが私の真名よ」
「三世!? お前三代目なの!?」
「まあね。だったら何よ?」
「いや……繋ぐね、命。良い飼い主なんじゃないか?」
「知らないわ。私は広い世界に飛び出したいの」
「ああ、そうかい。因みに源氏名ってのは飼い主が付けた名か?」
「そうよ」
「なんて言うんだ?」
「マナよ」
「は? 真名はハムステッド三世だろ?」
「真名はね。それで源氏名が『マナ』なの。マナカナの、マナ!」
「? 頭おかしくなりそうなんだが」
「もういいわよ、三世と呼びなさい!」
かくして、カスケとハムステッド三世、二匹の協力プレイが始まるのだった。
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