1人が本棚に入れています
本棚に追加
呪われた橋
汐の音がやけに鼓膜に響くのは、黒が無表情で手渡してくる静けさのせいでしょうか。
その静寂は知らずと僕を
夜の果てへと誘うのです
夢の果て……
燻る思考が眠気と混ざり、酸素不足の脳が見せるものは、汀に佇み、困った笑みを浮かべたまま、曖昧な問いを投げる君の横顔。
「この果てに見えるものって何かしら」
ありきたりな答えを書きそうになった僕は、慌てて解答欄を黒く塗りつぶし笑ってみせるのです。
何かを変えたくても
そのナニカがわからないままだから
サイコロを振った先はいつも
……フリダシニモドル
「いつまでこうしていれば
……いいのでしょうか」
これは君の声なのか
……それとも 僕の聲?
開かない銀幕 演目は独り芝居
狐疑的に
懐疑的に
猜疑的に
断崖に架かる呪われた橋の上で
かすかに届く月明かりを頼りに
溜息混じりにいくつもの配役を
声色を変えながら
つたない足取りで演じるのです
嗚呼……
風凪にかわる真夜中の一寸
この夜の果て 夢の果てに
淡い淡い暗闇が
揺れる水面で魅せるものは
朧げに笑う月の仕業でしょうか
……了
最初のコメントを投稿しよう!