呪われた橋

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呪われた橋

(しお)の音がやけに鼓膜に響くのは、黒が無表情で手渡してくる静けさのせいでしょうか。 その静寂は知らずと僕を 夜の果てへと(いざな)うのです 夢の果て…… (くすぶ)る思考が眠気と混ざり、酸素不足の脳が見せるものは、(みぎわ)に佇み、困った笑みを浮かべたまま、曖昧な問いを投げる君の横顔。 「この果てに見えるものって何かしら」 ありきたりな答えを書きそうになった僕は、慌てて解答欄を黒く塗りつぶし笑ってみせるのです。 何かを変えたくても そのナニカがわからないままだから サイコロを振った先はいつも       ……フリダシニモドル 「いつまでこうしていれば       ……いいのでしょうか」  これは君の声なのか       ……それとも 僕の聲? 開かない銀幕 演目は独り芝居   狐疑的に      懐疑的に         猜疑的に 断崖に架かる呪われた(ぶたい)の上で かすかに届く月明かりを頼りに 溜息混じりにいくつもの配役を 声色を変えながら つたない足取りで演じるのです 嗚呼……   風凪にかわる真夜中の一寸   この夜の果て 夢の果てに 淡い淡い暗闇が   揺れる水面で魅せるものは (おぼろ)げに笑う(きみ)の仕業でしょうか             ……了
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