どっぐ★ファイト!

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「トイレで溺れた」  時が止まった気がした。俺の想像力が限界突破して何が起きたか想像できちゃった。 「トイレで踏ん張ってたら犬化したみたい。たまっている水が大きいタイプのトイレだったから、頭がすっぽりはまっちゃったの。自分の父親が犬の状態でトイレに頭突っ込んで死んでるって、まあまあショックよ」  まあまあっていうか今凄いショックなんだけど、いろんな意味で。 「ごめん。それ、出した後?」 「脱糞前。きれいな水で溺れたから大丈夫」 「何も安心できない。要するにお父さん、小型犬だったってことじゃん。え、俺チワワみたいに小さいの?」 「何故か一人一人違う犬種。あんたがどんな犬かはわからない」  いやでも古い一族だったら、品種改良されて生まれたような室内犬じゃないと思うんだけど。せめて柴犬以上であって欲しい。いや柴犬も大概小さいか。シェパードぐらい欲しいな。  初めて犬化する時はマジで突然らしい。マニュアルがあるわけでもない、文字化して勉強できるわけでもない。自分で姿の切り替えを学ぶしかない。  子供の時になる人もいれば大人になってからなる人もいる。稀なケースだと胎児から犬だった人もいるらしい。だから親戚は産婦人科と病院経営してんのか。普通の所行けないもんな。 「ちなみにお母さんはカタギ。遺伝子の優劣があるのか完全にランダムなのか知らないけど、私は犬化しないタイプ」 「マジで。俺ガチャに当たったか」  犬化するやつの特徴は七歳くらいでクソ(ぢから)となる。そうして犬化が進むにつれて五感が犬に寄っていく。犬は近視だ、いずれ近視になるみたいだけど俺はすでに近視だから置いといて。聴覚と嗅覚は異様に良くなる。 「味覚は?」 「犬って人間より味蕾が少ないから、いずれは舌馬鹿になる。お父さんもそうだった」 「姉ちゃん後世です、今のうちに松阪牛を食べさせてください」 「だめに決まってんだろ」  速攻で却下された。うちは貧乏だからしょうがないけど。  とりあえず馬鹿力は気をつけてきたから大丈夫。嗅覚と聴覚も大丈夫だと信じて。問題は味覚だ、友達と何を食べても美味しい不味いは正直に言えなくなる。味覚がなくなる病気になったとでも言っておけばいいかな。 「おはー」 「おはよ」 「ういー」  翌朝、浩一と那由多に合流した。毎日一緒に学校に行く面子だ。一応こいつらには先に言っておくか。 「俺味覚障害になったかもしれん」
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