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私と同じ年の近所に住む、いとこのめぐちゃんは普通だった。
顔、特別に可愛いわけではないけどブスでもない。身長も真ん中よりちょっと後ろくらい。国語のテストはいい成績だけど一番を取ったことはない。算数 、数学はだめっていうが平均点ぐらいは取っている。体育も一番を取ったことはないけどビリもない。音楽も美術もみんなそう。良くも悪くも目立った所のない女の子だった。
私は勉強はダメだったけれど、小さい頃から習ってたテニスでは市の大会で優勝したことがある。県大会でもベスト8まで行った。そんな私におじいちゃんは「テニスを続ければいいことあるよ」と言っていた。
テニスクラブのコーチになった私の教え子が全国大会で優勝した時、おじいちゃんは正しかったと思った。
お正月に集まったときにめぐちゃんのことをおじいちゃんは「この子は大きくなったら化ける子だ」とよく言っていた。小さかった私はお母さんに「めぐちゃん大きくなったらお化けになるの」と聞いていたが「大きくなったら綺麗な女の人になるよっていう意味だよ」って教えてくれた。酒が入ったおじさんは他に褒めようがないなどと言っておばあちゃんに怒られていた。
お互い大学になって家から離れて一人暮らしをしていると顔を合わせるのは お正月くらいになった。久しぶりに会うとめぐちゃんは綺麗になっていた。「大学の友人で化粧が上手な人がいて、教えてもらっているの」と笑っているが、あまりの変わりようにおじいちゃんは正しかったと思った。
年に一、二回メールで連絡を取るくらいになっていためぐちゃんからのメールに、付き合っている男の人が出てくるようになった。私はそのうちめぐちゃんはこの人と結婚するのかなと思っていたら、めぐちゃんは亡くなってしまった。雨の日の夜に階段から落ちて救急車で病院に運ばれている途中で亡くなったと聞いた。
付き合っていた彼氏はお通夜でもお葬式でも泣いていた。四十九日が過ぎた頃、めぐちゃんの彼氏が捕まった。めぐちゃんは階段から落ちたのではなく突き飛ばされたらしい。
彼氏によるとめぐちゃんが毎晩、夢枕に立つそうだ。真っ青になった彼氏は「悪かった。ごめん。化けて出てこないでくれ」と警察で泣いているそうだ。
おじいちゃんは正しかったと思った。
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