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それはある満月の夜のことでした。
広い野原に座って見上げてみると、美しいお月さまの中ではうさぎさんがお餅つきをして…あれ、おかしいですね、うさぎさんがいません。なんかちょっと寂しい満月です。
そんな寂しいお月さまを見ていたら、向こうのほうからぴょんぴょんぴょんぴょん、何かが跳ねてきました。うさぎさんでした。それもちっちゃな子うさぎさんです。
子うさぎさんは楽しそうにぴょんぴょん跳ねています。
するとどこからか声が聞こえました。
「こら、待ちなさい」
子うさぎさんはよりいっそう楽しそうに跳ねています。
「もう、勝手なことしちゃダメじゃない」
そう言って出てきたのはママうさぎさんでした。
ママうさぎさんの話を聞くところによると、どうやら子うさぎさんは前から綺麗な地球が大好きで、どうしても行ってみたかったので、ママうさぎさんがお餅つきをしているすきに飛び出し、地球までやってきたようなのです。ママうさぎさんは驚いて慌てて追いかけてきたのです。
「ほら、あれを見てごらん」
ママうさぎさんはやっと子うさぎさんをつかまえて、お月さまを指さしました。
「あれじゃあ寂しいでしょ?」
子うさぎさんは動くのをやめてお月さまを眺めました。
たしかに、お月さまは何の模様もない寂しいお月さまでした。
「地球の人たちはね、あそこで私たちがお餅つきをしてるのを楽しく見てるのよ。だから急いで帰らなきゃ。ね?」
「…うん」
子うさぎさんもやっとわかったようです。
こうしてママうさぎさんと子うさぎさんは、仲良くお月さまへ帰っていきました。
見上げてみると、さっきまでの寂しさが嘘のように、またうさぎさんがお餅つきをする綺麗な満月が見れてめでたしめでたしでした。
え?ママうさぎさんと子うさぎさんはいるのに、パパうさぎさんはいないのかって?
大丈夫。ちゃんといますよ。
パパうさぎさんは今、お月さまの裏側に単身赴任して、一生懸命ひとりでお餅つきをしていますから。
おしまい
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