おばけよ、おばけよ、おばけさん!

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おばけよ、おばけよ、おばけさん!

 脚立をセット。  カメラをセット。  パソコンをセット。  そしてがっつり配線を繋ぐ。アプリを起動して、準備万端。  男はにやりと笑って、録画を開始した。染みだらけの壁と天井。ボロボロのワンルームアパートを借りた理由はただ一つ。この事故物件で、幽霊を撮影するためだ。  そう、男はオカルト系ユーチューバー。今度こそは幽霊の撮影に成功して、大ヒットを狙うのだ。というか、狙わないとまずい。いい加減再生回数を稼がないと収入がない。コンビニのバイトだけではどうしても生活がギリギリなのである。 「皆さんこんにちは!ユーチューバーの、メッキンです!」  派手な金髪に染めた長髪を撫でつつ、男は明るい声でしゃべり始める。 「今回は予告した通り!事故物件での、幽霊撮影に挑戦したいと思います。このアパートでは数年前、夫婦が痴情のもつれにより無理心中を図って自殺したとされているのです。今でも二人はお互いの恨みから喧嘩を続けており、特に夫は妻の浮気相手と同じくらいの年ごろの男性を呪うとされているのです。つまり……俺くらいの年の男は、超危ないってことっすね!」  ホラーに似つかわしくないテンションだとわかっている。しかし、そもそもオカルト系ユーチューバーなんてやっているのは、幽霊が大好きだからに他ならないのだ。  子供の頃から、学校の怪談や七不思議が大好きだった。友達と肝試しも繰り返した。しかし、一度も幽霊に遭遇することが出来ないまま大人になってしまったのである。高い機材も買ったし、今回は本物の事故物件だ。きっと今度こそ、幽霊の撮影に成功するはず。いや、もう撮影できなくてもいいから目の前に現れて欲しい。いい加減、本物のお化けを見てみたいのだ。 「さあ、おばけの夫婦さんたち!化けて出てきてください!俺はここにいますよお!呪ってくれてもいいので、ぜひぜひ!」  何も見えない、薄暗い部屋に呼びかける。さあ、今度こそ念願叶う時が来るのかどうか!
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