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「いや、無理だろ」
「うん、無理よね……」
それを見ていた夫婦の幽霊。顔を見合わせてため息をつく。
というのも、実はさっきからずーっと男の後ろに座ってるのに、彼はちっとも自分達に気付かないのだ。夫婦は気づいていた。彼がたぐいまれなる“零感”であることを。
そのせいで、彼が操作したカメラにさえ自分達は映らなくなっていることを。
そもそもの話。
「あたし達、喧嘩してたんじゃなくて、二人仲良く酔っぱらってすっころんで頭打って死んだだけなんですけど……。呪うとか、そんなつもり一切ないんですけど……できもしないんですけど……」
謎の尾ひれがついてしまったせいで、悲劇的な無理心中をした夫婦にされてしまっている。別に仲が悪いわけでもなんでもないのに。
夫婦は揃って、二度目のため息をついたのだった。
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