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係長の話を聞いて、かえって冷静になれた。
警視庁の警察官何万人の一人が、その人だと、何の根拠もなく思えた。
そう思うと、美寿々が心配そうに私の方を見たのがわかったけど、今は、ただ、淡々と仕事をしていたかった。
午後三時過ぎ、音を切っていたスマホが振るえ着信を告げる。
画面には、待ち侘びた人の名前だ。
慌ててスマホを掴み、係長に許しをもらって廊下で通話ボタンをタップする。
「えー、すいません、中川さん?でいらっしゃいますか?」
聞いたことのない、男性の声。
「はい。」
「いきなり申し訳ありませんが、私は、警視庁警備課の、・・・。」
さっきまで根拠がなかった予感が、根拠を持ってしまった。
佑斗が、大怪我をした。
その後は、冷静だった。
係長に事情を話し休暇をとり、心配する美寿々や山口さんに、大丈夫だと告げ、執務室を出た。
スマホで電話で聞いた病院までの経路を確認する。
地下鉄やバスの乗り継ぎに不安を感じ、タクシーに飛び乗った。
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