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おばさんは窓の外に視線を向けたまま、しばらくそうしていた。
ちょうど、私達が乗ってから最初の停車駅に着いた時、おばさんは私の方に向き直し、
「そういえば、佑なんだけど、」
と話し始めた。
「あの子、変わった気がするの、ほんの少しだけど、健斗がいなくなってから、何か抑えているような・・・。」
「・・・、無理しているとか?、ですか?」
「無理、というより、自分の意思より優先しているものがあるの。」
「なんでしょうか?」
「たぶん、健斗の意思。」
「え?」
「こんな時、健斗ならどうするか、という感じで。」
「・・・。」
「私の思い過ごしならいいんだけど、ね。」
おばさんは、また、窓の外を見た。
私は、佑斗が以前言った、
『兄貴の代わり』
という言葉を思い出した。
私は、佑斗を、あいしている。
それは、気づいたら、そうなっていた、
と思っていた。
でも、本当は、健斗のように振る舞おうとする佑斗に健斗の面影を見つけたからなのか。
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