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母さんが遥と一緒に病室に来た。
「ゆ、う・・・。」
母さんは泣いてしまった。
「ごめん、本当にごめん・・・。」
遥に促され、母さんはベッド脇の椅子に座った。
母さんの肩を、撫でる。
少し、母さんは小さくなった、気がした。
しばらく、そうしてから、遥を見る。
目が合った。
遥は、俺をじっと見ていた。
何か考えているような、そんな目をしていた。
母さんが落ち着いてから、事件のことや怪我の状態を話した。
親父から粗方聞いていたのだろうけど、母さんには、自分の言葉でしっかり説明して、安心させたかった。
その後は、母さんの再採用の話しや、親父が犬を飼いたいと駄々を捏ねていることなど話した。
「うん、一人で大丈夫よ。遥ちゃんはゆっくりして。
せっかくだから、渋谷でも行ってみようかな。」
昼前になり、母さんは椅子から立ち上がった。
母さんが渋谷に行ったら、補導したくなるんじゃないだろうか。
そんな変な心配をしてみる。
そんなことを、思えるくらい、母さんは元気になっていた。
ここでいいと言って母は一人帰って行った。
「遥、ありがとう。」
そう言って、遥の手を握る。
なんか、遠慮なく触れるのが、嬉しくて、つい、にやけてしまう。
ちょっと、刺されて良かったなんて、不謹慎なことを思う。
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