181人が本棚に入れています
本棚に追加
現在〜指輪
佑斗が退院できることになった。
いつの間にか、芽生えた不安は、あっという間に私の中で大きく育っていった。
佑斗は、健斗の代わりとして私を愛そうとしてるのか。
健斗がいたら、起きない気持ちだったのか。
健斗がいたら?
健斗がいなかったから?
健斗を絡めて、もしも、を考えてる自分が、すごく薄情な女に感じた。
退院の前の日、佑斗が上司に許可をもらい、私が待機寮の彼の部屋から退院に必要な物を取りに行った。
家具らしい家具もなく、佑斗の書いたメモを見ながら、目当ての物を探していく。
いくら親しいとはいえ、できるだけ余計な物を触らないようにする。
でも、目に入ってしまった。
実用ばかりで、あまりに殺風景な部屋に、そこだけ優しい色だった。
ベッドボードの水色のジュエリーケース。
いけないことだと思うのに、つい、持って開けた。
横に並べてられた大小のピンクゴールドの指輪。
閉まっていた記憶が、ぽん、と出てくる。
婚約指輪を見つける時、私がマリッジリングならこんなのがいいな、と話した。
小さい指輪を手に取る。
内側の、刻印は、
K to H,
何で、佑斗が、持っているの?
最初のコメントを投稿しよう!