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佑斗から頼まれた衣類などを持って、部屋を出た。
水色のジュエリーケースは、
自分のバッグに入れて持ってきてしまった。
何で、佑斗が健斗の用意したマリッジリングを持っていたのか。
考えても答えは出ないのに、考えながら一階のエントランスまで来たところで、目の前から女性が入ってきた。
仕事から帰ってきたのだろう。パンツスーツにヒールの低い靴。ショートカットがとても似合う顔立ちだった。
どこかで見たことある。
あっ、病室か。
会釈してすれ違うとき、
「あの。」
声をかけられた。
「はい?なんでしょうか。」
「荻野係長のお兄様の婚約者さん、ですよね?」言い方に棘があった。
「はい。あなたは?」
「私は、荻野係長の部下の森と言います。
それ。退院のときの支度ですか?」
「ええ。」
「明日、退院ですね。」
「はい。」
「どういうつもりですか?
荻野係長、お兄様の代わりですか?」
「えっ?何を、言って。」
「顔ですか?似てるからですか?」
「・・・いい加減にしていただけますか。」
それだけやっと言って、「失礼します。」と、帰り道を急いだ。
『兄貴の代わりになれない?』
いつかの佑斗の言葉が、浮かぶ。
喉が渇いて、張り付く。
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