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仕事を終え、マンションに帰る。
健斗との家。
二人とも今の仕事を辞めるつもりはなかったから、二人で話して、私が新幹線通勤することや、駅からすぐのこのマンションに住むことを決めたんだ。
でも、二人でこの場所で過ごした時間は、少なかった。
次第に部屋から消えていく、健斗の匂い。
それに縋りつかない私は、やはり、佑斗を代わりに得たからか。
健斗と佑斗、二人に対し、罪悪感を抱いて、さらに、罪悪感を抱く自分に、偽善を感じて、気持ち悪い。
リビングの電気を付けずにローテーブルに突っ伏す。
手には、佑斗の部屋から持ってきてしまった水色のジュエリーケース。
薄手のカーテンから、外の賑やかな夜の灯りが透け通る。
その夜の灯りが、一人の私を追い詰める。
今すぐ、健斗を戻してほしい。
その思いは、寂しさなんて美しいものからではなく、怒り、から生まれていた。
何で私を一人にして死んでしまったの?
何で私を待たずに逝ってしまったの?
何で、私にあいしている、なんて言ったの?
私はあなたに怒りたいんだ。
ずっと、怒りたかったんだ。
スマホが、ふわり、しばらく間を開け、また、ふわり光る。
きっと佑斗からのメッセージだ。
美寿々からお昼に言われた言葉を思い出す。
ごめん、佑斗。
まだ、会えない。
私、明日、健斗を探しに行くから。
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