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「伊織さん……?」  暗闇の中で、円香は必死に愛しい彼の姿を探しながら名前を呼ぶ。  けれど、いくら進めど暗闇に光は灯らない。 「伊織さん、どこ?」  何も見えない、名前を呼んでも返事が返ってこない。そんな状況に不安が募る円香の瞳からは大粒の涙が零れていく。 「伊織さん……一人にしないで……私、伊織さんが居ないと……っ」  ぽろぽろと涙を流して泣きじゃくりながら伊織を探していると突如辺りが明るくなり、 「円香」 「伊織さん!」  その光と共に伊織の姿が現れた。  探していた愛しい彼がようやく見つかり走り出す円香。  手を差し出している彼の手を掴もうと自身の手を伸ばした、その時―― 「え……伊織さん? どこ? どこなんですか!?」  再び辺りが暗闇に包まれ、彼の姿も消えてしまう。  そして、 「円香、さよならだ――」  暗闇の中で伊織のその言葉を聞いた円香は、 「そんなっ、嫌っ! さよならなんて嫌ですっ! そんな事、言わないで! 伊織さん!!」  姿の見えなくなった彼に向かって叫ぶように言葉を投げ掛けると、 「円香ちゃん、大丈夫!?」 「……早瀬、さん……」  視界が徐々にクリアになって円香の意識がはっきりすると目の前には心配そうに見下ろす雷斗の姿があり、今の伊織との別れは夢だったと実感し安堵した。
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