483人が本棚に入れています
本棚に追加
/121ページ
「た、助けてくれ! 頼む! どうか、命だけは……!!」
高層マンションが建ち並び、田舎では決して見られる事の無いくらいに深夜でも明かりの灯る都会のとある某所のとある一室で、男二人が向かい合っていた。
一人は黒縁の眼鏡を掛け、乱れた茶色の髪を何度も何度も床に付けては、向かい合う相手に『助けてくれ』と懇願している男。
対するもう一人はフードを目深に被り、全身黒い服に身を包み、少し長めの前髪から時折覗く蒼い瞳をギラつかせながら土下座する男の前に立ちはだかっている男。よく見るとその手には拳銃が握られていた。
「お前、散々悪どい事をして多くの命を他人に依頼して奪った挙句、自分が殺されそうになったら命乞いか? 情けねぇなぁ」
「違う! 俺は騙されたんだ! 全て指示されただけなんだよ!」
「お前らみたいなのは、みんなそう言うんだよなぁ。騙されたからって、人殺して良いわけ? だから俺の事は見逃してくれ? 人の命奪っておいて、それはちと都合良すぎじゃねぇのか?」
状況を見る限り銃口を向けられている男は、どうやら何者かに犯罪の片棒を担がされたらしく、ひたすら許しを乞うも、銃を持った男は聞く耳を持たず相手に同情するどころか鼻で笑っていた。
「何でもする! 金もやる! だから、命だけは助けてくれ! 見逃してくれ……」
「金なんかいらねぇよ、何でもするって言うならさぁ――」
なおも頼み込んでくる男を前に銃を持った男は口元に薄ら笑みを浮かべると、言葉を口にしながら一歩、また一歩距離を詰めていき、真正面から頭に銃口を押しつける。
「ま、待ってくれ! 頼む!!」
「――お前のせいで死んだ人たちに詫びなよ、あの世でな」
必死の懇願も虚しく、銃を持っていた男が迷うことなく引き金を引いたことで銃口を突きつけられた男は、パンッという小さい音と共に力なく床に倒れていった。
最初のコメントを投稿しよう!