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「何だよ? まだ何かあんのか?」
「……あの、私……」
帰れと言ったのに帰らないどころか、声を掛けて人の前までやって来たかと思えば、何かと問うも答えない。
そんな円香に苛立った伊織は灰皿に煙草を押し付けて吸殻を捨てると、わざとらしく溜め息を吐きながら再び問いかけた。
「何かあるなら言えよ。俺は帰れと言ったはずだぜ?」
「その…………私、帰りません」
「は?」
「お付き合い……させてください」
伊織は思う、開いた口が塞がらないとはこういう事ではないのかと。
「……アンタさ、自分が何言ってるのか分かってんの?」
「わ、分かってます」
「そーかよ。だったらアンタは頭がイカれてるな。いいぜ、こっちに来いよ」
伊織の言葉に頷いて返した円香は彼の目の前に立つ。
「服を脱げ、自分でだ」
「…………」
そんな伊織の要求に一瞬躊躇った円香は再び小さく頷くと、カーディガンのボタンに手を掛け、一つ、また一つとゆっくりボタンを外していく。
ボタンを全て外し終わったカーディガンを恥じらいながらも脱ぎ捨て、自ら下着姿になった。
何故円香は帰る事なく、自らこのような行動に出たのかというと、
――それは、円香が既に伊織に惹かれてしまっていたから。
「俺の上に跨がれよ」
「…………」
更なる伊織の要求に戸惑いながらも、伊織に跨りソファーに膝を立てた円香は、彼を見下ろすような形になる。
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