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「……分からねぇな。アンタは何がしたいんだよ。普通こんな事言われて素直に従うか?」 「…………私、知りたいんです……貴方を、もっと知りたい」 「へえ? そりゃどーも。けどな、俺を知ったところで何もいい事はないぜ?」 「そんなの、知ってみないと分からない……です」 「…………座れよ、ここに」 「え……で、でも……」 「いいから」  伊織に促され、彼の膝の上に腰を下ろす円香。  近距離で向かい合う二人は視線が外せずに無言のまま。  そして―― 「いいぜ、付き合っても。けどな、付き合うなら子供(ガキ)みたいな付き合い方はしねぇ。大人の付き合いってヤツだ。言ってる意味、分かるよな」 「…………」  問いかけに無言で頷く円香に伊織は右手を彼女の首筋からうなじに持っていき、 「んっ!」  先程と同じように唇を奪う。 「……っは……、んん……」  角度を変えながら何度となくキスをされる円香だけど、少しだけ慣れたのか何とか息継ぎは出来るようになっていた。  まだぎこちないけれど一生懸命応えようとしている姿を前に、伊織は円香に対する考えを変えた。 (こんな奴、初めてだ……本当、頭イカれてやがる)  伊織にとって、円香のような女は初めてだった。  キスをしただけで身体を震わせ、恥じらいながらもそれに応えようとする姿を見て、もっと自分に溺れさせたいとも思った。 (コイツ、確か雪城って言ってたよな。雪城と言えば結構名の知れた家柄だ。任務の為にもそれを利用しない手はねぇよな)  そして、それと同時に円香の家柄も利用出来るのではとも考えていた。
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