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「――で? 伊織、その女の子と付き合ってんだろ? 一緒に住んでんのか?」
「馬鹿言え。住む訳ねぇだろーが。任務の邪魔だ。つーか、あの日以降会ってもいねぇよ」
「相変わらず冷てぇな、伊織は」
「あのな、俺はあくまで使える駒としてキープしてるようなもんで、別に恋愛ごっこする気はねぇんだよ。ま、会うとするならヤリたいと思った時くれぇだな」
「下衆が。まあ何でもいいけどよ、くれぐれも俺らの仕事、知られるなよ?」
「誰に言ってんだよ。俺がそんなヘマする訳ねぇだろうが。それじゃあな」
任務の状況確認をする為、雷斗と電話をしていた伊織は用事が済むとさっさと切ってスマホをソファーの上に投げ捨てた。
「あー、そういえば円香に連絡したの、いつだったかな」
雷斗との電話で円香の話題が出た事でふと彼女の存在を思い出した伊織は再びスマホを手に取ると、気まぐれから円香に電話を掛けた。
「――も、もしもし!?」
すると、一度目のコール音で電話に出た円香。
声の様子から驚いているのが伊織にも伝わっていた。
「おー悪ぃな、連絡出来てなくて」
「い、いえ! その……お仕事忙しいの、もう大丈夫なんですか?」
「いや、まあ、まだ忙しいのに変わりはねぇよ」
「そうなんですね。お忙しい中、わざわざ電話をくださってありがとうございます!」
ただ、何気なく電話を掛けた伊織には予想もしていない言葉で、
(何だよ、ありがとうって……俺はただ、気まぐれで掛けただけなのによ……)
声だけしか聞いていないはずなのに、今円香がどのような表情を浮かべているか、手に取るように分かる伊織は複雑な心境だった。
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