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 この前彼女の下着姿を見た時はイメージ通り白い下着だった事から大して意識もしていなかった伊織だけに、今回は全く真逆とあってついつい意識してしまっていて、それを悟られない為に表情には出さず、慌てて部屋を出たのだった。  伊織がシャワーを浴びてリビングに戻ると、ソファーに座り何やら真剣な表情でスマホを凝視する円香の姿があった。  しかも、かなり夢中で見入っているようで伊織が戻って来た事にすら気付いていない。 (何を真剣に見てんだか)  どこか面白く無さそうな伊織はそのまま円香の元まで歩いて行き声を掛けると、 「おい」 「ひゃあ!?」  驚いた円香は弾みで持っていたスマホを手から離して落としてしまう。 「何だよ、その声。ったく、何を真剣に見てんだか――」  円香の落としたスマホが伊織の足元に落ちたので彼がそれを拾いあげると偶然画面が目に入り、 「――何だこれ……」 「あぁぁ!! み、見ないでください! 見ちゃ駄目です!!」  円香が直前まで見入っていたものが分かってしまう。  呆気に取られる伊織に見られた事に焦る円香が大きな声を上げて立ち上がり、スマホを取り返そうと手を伸ばすも、 「ふーん、こんなの見てどうするつもりなんだよ?」  何かを思いついたらしい伊織は意地の悪い笑みを浮かべながら、円香をひょいっとかわしていく。 「そ、それは、あくまでも参考に!」 「へぇ?」 「い、意地悪しないでください……!」 「別にそんなつもりはねぇけどな?」 「嘘です! とにかく、今見たものは忘れてください!」 「どーするかな」 「い、伊織さんの意地悪……」  からかわれて恥ずかしさに耐え切れなくなった円香はどうする事も出来ずに俯いてしまう。  少しやり過ぎたと反省した伊織はそんな円香の頭にポンと優しく手を置くと、 「分かったよ、悪かった。もうからかわねぇから拗ねるなよ」  悪かったと謝りながら円香にスマホを返した。  円香が見ていた記事には『異性に意識される方法やお家デートのノウハウ』などが書かれていた。  未だ伊織はルームウェアがお気に召さなかったのだと勘違いしている円香は何とか挽回しようと必死だったのだ。
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