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「はぁ……また伊織さんからの連絡、途絶えちゃったな……」  伊織の家に泊まりに行ってからひと月半、またしても連絡が途絶えていた事に嘆く円香。  休日なので自室のベッドの上でだらだらと過ごしていると余計に伊織の事を考えてしまうようで、気付くと溜め息を吐いていた。 「そういえば、請け負ってた仕事がひと段落したから元の家に戻ったって言ってたけど……確か、便利屋さんの事務所は住宅も兼ねてるって、言ってたよね……」  実は伊織からの連絡が途絶える前、マンションから引っ越すので忙しくなるという内容の連絡を貰っていた円香。  それから暫くは忙しいだろうと連絡が来なくても我慢していたのだけど、流石にもう我慢の限界が来ていたのだ。 「便利屋さん……確か、utilityっていう名前だったような……」  伊織の職場である便利屋の場所をネットで検索する円香。 「ここからだと、電車で三十分ちょっと……駅からも結構かかるんだ」  場所を確認した円香は自宅最寄り駅の電車の時刻を調べ始め、 「よし、この電車に乗ろう! 急いで準備しなきゃ」  ちょうどいい時間の電車を見つけるとすぐに出掛ける準備に取り掛かる。  そして、電車を乗り継いで伊織の住む町へやって来た円香はバスに乗り、そこからスマホのナビを頼りに便利屋の事務所を探していく途中で、 「あれ? 円香ちゃん?」  近くのコンビニへ買い出しに来ていた雷斗と偶然鉢合わせた。
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