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「つーか、こんなとこまで来るか普通、有り得ねぇな」 「おい伊織!」 「何だよ? 雷、テメェには関係ねぇだろ? これは俺と円香の問題だ」 「それはそうかもしれないけど、もう少し言い方考えろって言ってんだよ」  伊織の冷たい態度を見兼ねた雷斗は苛立ちを抑えきれずに詰め寄っていく。  睨み合う二人の間に険悪なムードが流れる中、それまで黙っていた円香が口を開いた。 「すみません、いきなり来てしまって。伊織さんが怒るのも当然ですよね。私、帰ります!」 「あ、円香ちゃん!」  円香は悲しみを(こら)え瞳に涙を溜めながら、いきなり訪ねて来てしまった事を詫びると逃げるように事務所を出て行った。 「おい伊織! 何であんな風に言ったんだよ? お前、あの子の事、特別に思ってたんじゃねぇのかよ?」 「はあ? 俺がいつそんな事言ったんだよ? アイツと付き合ってるのは駒として使う為だって言ったよな? 事務所戻ってきたし、アイツを使う場面は無さそうだから連絡も取らなかった。自然消滅狙ったのにここまで訪ねて来るとかさ、アイツ本当に馬鹿だよな」 「……最低だな、お前」 「何とでも言えよ」  互いに言い合い、これ以上のやり取りは無駄だと思ったのか視線を外した伊織はそのまま居住スペースである上の階へ上っていき、雷斗は事務所を飛び出し円香の後を追い掛けた。  事務所を出て行った円香はというと、 (伊織さん、怒ってた……。勝手な事、しなきゃ良かった……)  少し歩いた先にある小さな公園のベンチに座り、涙を流しながら自分の行動を悔いた。  正直、円香は伊織の態度の変わりように驚きを隠せなかったのだ。
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