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雷斗自身も伊織と同じであまり恋愛に興味はない。過去に居た組織で起きた女絡みのいざこざが理由の一つなのだろう。
そんな雷斗が何故円香を気に掛けているのか、それは伊織の事で悲しみに暮れているのに前向きに振舞おうとする健気な様子に心を打たれ、放っておけなくなってしまったから。
だけど、円香の心の中には伊織しか入り込めない事を雷斗は悟っていた。
それに、伊織だって本当は円香を好きな気持ちは変わっていないと知っているから、そんな二人の仲を壊す事など心優しい雷斗には出来ないのだ。
「……はぁ。やっぱりここは、俺がお膳立てしなきゃな」
円香から離れ、そう呟いた雷斗はスマホを取り出すと伊織に宛ててあるメッセージを送る。
そして、
「円香ちゃん、冷えて来たし、そろそろ行こうか」
海岸に着いてから約三十分、流石に身体が冷えて来た雷斗は黄昏れる円香に声を掛けて車に戻る事に。
「大丈夫? 寒くない?」
「はい、大丈夫です」
「さてと、お腹空いたよね? ご飯でも食べに行こうか?」
「……そうですね」
「この近くに俺のオススメの洋食屋があるんだ。そこでもいい?」
「はい、是非」
「それじゃあ行こっか」
お昼はとうに過ぎて流石にお腹が空いていた二人は雷斗のオススメだという洋食屋へ向かう事になった。
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