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「海だ! 早く弾を撃ち込め!」
榊原の言葉に潜んでいた彼の仲間が煙が漂う中、一斉に伊織が飛び込んだ海目掛けて弾を撃ち込んでいく。
「チッ。逃げ足の速い奴め。おい、お前らはそこでアイツが出てくるのを待ってろ。残りの奴らは倉庫内に戻れ」
榊原は五人程を外に待機させて残りの男を中に引き入れた。
「榊原さん、今の音は? もしかして、撃ったの?」
中へ入って来た榊原に詰め寄る円香に彼はニヤリと笑みを浮かべる。
「ああ、撃ったよ。撃たれた彼は海に落ちた。あれじゃあ助からないんじゃないかな?」
「そんなっ……約束が、違うじゃないですか!」
「約束?」
「私が貴方との結婚を承諾すれば、伊織さんたちや雪城家には手を出さないって!」
「そうだったかな? 悪いね、私は最近どうも忘れっぽくて……」
「酷い……っ騙したんですね!?」
「騙したなんて人聞きが悪いね。口の利き方には気をつけないといけないよ? 円香」
「触らないで! 貴方、本当に最低な人ですね」
「はぁ……優しくしていれば調子に乗る。これだから、女は好かない。気が変わった。お前のような聞き分けのない女は私に相応しくない。よってお前には二つの選択肢を与えよう。一つは臓器を提供する、もう一つは金持ちの男の元へ売られるか……さあ、どちらがお好みかな? 好きな方を選ばせてやる」
こんな男の言う事なんて聞くんじゃなかったと、円香は心底後悔していた。
(伊織さん……私、どうすれば……)
提示された選択肢を選べる訳がない円香は逃げようにも囲まれていて逃げられず、今度こそ手の打ちようがないと諦め掛けた、その時、
「もう一つの選択肢がある。それは――俺の元へ来る事だ、円香」
その声と共に円香の前に現れたのは、榊原に撃たれたと思っていたはずの伊織だった。
「伊織さん!?」
「貴様、何故ここに!」
流石にこの事態は想定外だったのか、海に逃げ込んだと思っていた伊織が現れた事に驚く榊原。
そして、撃たれたという榊原の言葉を信じていた円香もまた目の前に居るのが本当に伊織なのかと不安になる。
「俺は水の中になんて逃げ込んでねぇよ。そう見せかけただけだ。お前らが海に向かって弾を撃ち込んでる間に、俺はこの倉庫内に既に侵入してたんだ」
「なっ、どうやって……」
「俺らHUNTERを甘く見るなよ? お前らのアジトなんて全て知り尽くしてる。予め細工を施すくらい理由ねぇんだよ」
「糞っ! おいお前ら! 女もろとも撃ち殺せ!」
「判断が遅せぇよ」
榊原が言うよりも早く、伊織は見張りの男たちの急所目掛けて弾を撃ち込んでいく。
「そんな雑魚、俺の相手にならねぇよ。さてと、残るはお前だけだな」
「くっ……」
そして、ついに榊原だけが残り、再び伊織に銃口を向けられると今度は額に汗を滲ませていた。
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