武田、変身

4/5
前へ
/19ページ
次へ
「武田、ちょっといいか?」  その男は両手をポケットに突っ込んだまま、武田くんを見下ろしながら声をかけた。  クラスのみんなは息をのんで、その光景を見守っていた。  180cmを越える長身に分厚い胸板。武田くんに引けをとらない、がっしりとした体躯。  柔道部の西郷。武田くんとはよくつるんで、他校に睨みを効かせていた。武田と西郷。この2人の名前を出せば、この近隣の高校生たちは、皆怯んだ。  西郷に声をかけられ、武田くんは渋々ノートを閉じて立ち上がった。そして西郷の後を追って、教室から出ていった。  ざわめく教室。あの2人の背中から放たれる異様な空気が教室内を騒然とさせた。  もし2人がやり合ったら、どっちが勝つのか?教室内は、そんな話題で盛り上がっていた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加