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20分後、武田くんが1人で戻ってきた。傷や痣は見当たらない。どうやら、殴り合いにはならなかったようだ。
武田くんは自分の席に戻ると、周りの視線を気にするでもなく、再びノートを広げた。
何だ?何があったんだ?
誰もが気になっていた2人の話。多くの野次馬が2人の様子を遠くから窺っていたらしい。
野次馬の話によると、教室を出た2人は屋上へと出向き、面と向かって何やら話をしていた。西郷が武田くんに詰め寄る様子はなく、時折西郷の頷く姿が見えたという。
そのまま数分、2人は立ったまま話し合い、武田くんは西郷を置いて1人で教室へと戻ったそうだ。
後日、その話の真相が明らかとなる。
情報通の輩はどこにでもいるものだ。
武田くんは今までケンカになると、西郷とともにその場へ行き、強力な助っ人としてその場にいる全員をシメていた。
しかし金輪際、そういうことには関わらない。その旨を西郷に伝えたそうだ。
西郷は引き留めたが、武田くんは譲らなかった。最後は西郷が折れ、武田くんはケンカ道から足を洗う形となった。
分からなかった。
なぜあの武田くんが変わったのか?
彼の信念を変える何かがあったに違いない。
その真相は、彼しか知らない。
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