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11 翌朝、俺は仁坂からのLINEで目が覚めた。 "今日の約束忘れんなよ" 寝ぼけた目を擦りながら、溜息を吐く。 「忘れるわけないだろ…昨日の今日じゃん」 約束したのが、何週間も前なら分からなくもないけど…。 LINEにもう一度丁寧に溜息を落とした。 そして、何より虚しいのは、約束をするような友達はここ数年居ないと実感させられた事だ。 会社が終わって、人と会うなんて、歓送迎会と忘年会で会社の集まりがある時くらいだ。 俺は小さな会社でプログラマーをしていて、残業というのも、ここ最近では無いに等しい。大きな企業ならもっとSEから仕様書がおりてくるのだろうけど…。 何はともあれ、残業せずに帰宅出来るのはありがたい話だった。 趣味のドラマ鑑賞が録画なしできっちり見れるのだから。 そんな毎日なもんだから、本日も残業なくきっちり定時に仕事が終わってしまった。 スーツのポケットから携帯をとり出して時間を確認する。 「居酒屋に…行けばいいんだよな」 LINEに仕事が終わった事を入れて、昨日飲んだ居酒屋に向かった。 平日とて、客は多い。もともと陰キャなわけだから、こんなところが日常的に好きなはずもなかった。 暖簾を潜り、昨日と同じ場所に腰を下ろす。 ガヤガヤとした喧騒の中、まだ来ない仁坂を待つべきか、先に飲み始めるべきか迷っていた。 注文をしないまま、混み合った店内に居るのは気まずい。 俺はビールを頼んで、お通しの小鉢をつついて待つ事にした。 それから一時間が経った。 遅い…流石にお通しで粘れない。 仕方なく枝豆や、秋刀魚を注文して、携帯を覗いた。 タイミグ良く仁坂からLINEが入る。 "もう着く" 俺はこのままドタキャンを覚悟していただけに、仁坂がここへ向かっているのが分かって不思議な気持ちだった。   高校の頃、散々弄ばれたせいだろう。 「悪りぃ、待たせた」 「えっ」 仁坂が店に駆け込んで来て発した言葉に、俺は目を丸くしてしまった。 仁坂が謝ったのだから。 「何だよ、その顔」 「いや…まさか謝るとは…」 「あ゛?」 顎を上げて俺を上から睨む顔は相変わらず迫力がある。 俺は肩を竦めビクッと怯えながら「ごめんっ!」と謝った。 罵倒されると思ったのに、続きが来ない。 あれ?と片目ずつ目を開くと、仁坂はムスッと膨れたまま席についた。 「び、ビールで良い?」 注文でもして機嫌とらないと! 俺はとりあえず手を上げ店員を呼んだ。 「ジョッキでいいよね」 「あぁ…」 「お腹…空いてない?これ、美味しいよ」 とにかくご機嫌とりするように秋刀魚の塩焼きを彼の方へ押した。
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