287人が本棚に入れています
本棚に追加
13
13
「どれどれぇ…」
「ちょっ!返してよっ!」
ヒョイと伸ばした手を避けられ、仁坂は携帯画面をジッと眺めている。
イケメンの無表情は何だか怖かった。
「か、返せよ」
そう言った俺を無視して、仁坂は携帯画面をこっちに向けた。
「誰?怜って」
「と、友達」
「…友達いねぇって言ってたじゃねぇかよ!」
「だっ大学の時、唯一付き合いがあった奴で!たまたま昨日出会ったんだよ!」
仁坂は左目の下に二つ並んだ泣きぼくろの方に顔を傾けた。
「たまたま?」
琥珀色の瞳には感情がないみたいに冷たく見える。さっき微笑んで見せた時はあんなにあったかく見えたのに。
「たまたま…スーパーで」
「たまたま出会った大学時代の友人は、おまえにこんな事言うわけ?」
仁坂の言葉に画面を良く見る。
"昨日は会えて嬉しかった。卒業しても、陽海の事忘れられなかった。本当は会って言いたかったんだけど、俺達、ちゃんとやり直さないか?付き合って欲しい"
俺は口をパクパクさせてしまう。
携帯がテーブルに置かれて、俺に向けてシュッとソレを滑らせてきた。
目の前で止まる携帯を手にする。
仁坂は顎をしゃくる。
「ソレ…どーすんの?…あ、その前にさ、え?おまえ、大学時代彼氏居たの?」
俺はどうしてだか、秋口だというのに、背中に汗が玉になって、流れていくのを感じていた。
最初のコメントを投稿しよう!