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あのLINEのやり取りから二週間が経った。
俺はといえば……寝不足極まりない。
最初の二日程はモテ期の余裕をかましてしまった。
仁坂からは待てど暮らせど連絡が来ない。
仁坂の件を片付けないと怜にも連絡が取れない。
あの再会してからのしつこさは一体何だったんだ。
あまりに連絡がないので、馬鹿みたいに俺から数回連絡する始末だ。
それでも仁坂からは連絡がなかった。
何か怒らせた?いや、やっぱり気の迷いだった?
朝の満員電車をやり過ごし、いつも通りに仕事をこなして退社する。
駅に向かう道中だった。
「ヤダァ〜、累ったらエッチ」
「さやかさんが綺麗だからだろ?飯も済んじゃったし…出勤前だけどいいよ?」
「本当?エッチしてから出勤とか、マジで累っぽ♡」
「ハハ、俺っぽいの?何だよ、それ〜」
笑いあう二人の会話に怒りはマックスだった。
ズカズカと歩みより、後ろから仁坂の腕を引っ張ってやる。
「ぅおっ…っと…あれぇ、なにぃ〜山田じゃん」
「ちょっと…良い?」
睨みつける俺に、仁坂はニヤリと微笑んだ。
高校の時に、俺に良く見せた顔。
琥珀色の目が、憎らしいくらいに綺麗な三日月に細められた。
「さやかさん、ごめん、アフターでサービスするから後で店来てくれる?」
さやかと呼ばれた綺麗な女性はチラッと俺を一瞥して、まるでゴミでも見るような視線に切り替えてから仁坂の腕をとった。
「サービス…期待してまぁ〜す」
時間を取られた俺への当てつけのように声がこちらに飛んできた。
「ごめんね〜」
仁坂は笑顔でさやかという女に手を振る。
そして、ある程度姿が見えなくなると俺を振り返った。
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