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首筋を這う熱い舌。
たまに甘噛みしてくる。
顔を逸らすと黒シーツが波打って視界を埋めた。
意識がグラグラする。
ダメだダメだ!流されるっ!!
九年前まで、触れていた肌。
俺に…性の歪みとやらを教え込んだ仁坂の身体が、心地よい重みでのしかかっている。
「なぁ…このクマ、どうした?…寝不足?仕事?忙しいとか?」
頰に添えた手が温かく、指が目の下を優しく撫でる。
「コレは…」
「言えないって事は…もしかして、原因…俺?」
俺は悔しくなり、キッと仁坂を睨んだ。
「大当たりぃ〜」
仁坂は嬉しそうに笑い、俺の両手首をガッチリ頭の上でひとまとめにして言った。
「…俺から連絡来るの、待ってたのか?こんなに目、真っ赤にして。ウサギちゃんかよ」
仁坂の言葉にフイと視線を逸らす。
「俺はっ…ちゃんと連絡しただろっ!ちゃんと!残業ないからっ!いつでも良いって!おい!仁坂っ!何してんだよっ!」
頭の上でひとまとめにされた手首にヒヤリと鉄の感触。
ガチャッと音がして、頭上を見上げると、手錠がかかっていた。
「好きだろ?結構ガチのヤツだから、暴れたら傷になるぞ」
「ちょっと!話っ!」
「あぁ、俺に連絡したって話だろ?知ってるぜ」
「知ってる?!じゃあ何で二週間もほったらかしたんだよっ!何回か連絡だって入れたし!」
「ハハ…それも知ってる。」
知ってるだって?
俺がどんな思いでこの二週間を過ごしてきたと思ってるんだ!
頭上で手錠がかかり、ベッドヘッドの柵に固定された俺の腕をシャツの上から撫でる仁坂。
怒りが快楽を求める思考にすり変わっていく。
「二週間…ずっと俺のこと考えてたんだ…可愛いなぁ…山田」
予定通りだとでも言わんばかりの表情に、俺は沸々と湧き上がる怒りを溜め込んだ。
「狙い通りかよ」
「あぁ…しっかり狙い通りだ。期待を裏切らないのは昔からだもんな、山田」
「あんな綺麗な人が居るならっ!俺にこんな事する必要ないだろっ!ジッポは返すっ!免許証を出してくれ!もう解いてっ!…解いて…ぅゔっ」
あろうことか、27歳にして、泣き出してしまった。
手錠のせいで涙も拭えないし、何で涙が出るのか分からない。
「山田?…なぁ…何で泣くんだよ…泣くなよ…痛いの…好きだろ?」
「やっ…だぁ…仁…坂っ…ヤダ…ヤダァ」
「…」
仁坂の唇が体から離れていく。俺に跨りながらジッと俺を見下ろしている。
何で泣いてるのか
何が嫌なのか
分からない
二週間も放置されて、蓋を開けたら仁坂はそれを知っていた。
わざと揶揄って楽しんでた。
あんな綺麗な人をはべらせて!
「俺にっ…こんな事すんのっ…ぅ…ズズっ…嫌がらせっ…何がっ…楽しんだよっ!」
涙 鼻水 ぐっちゃぐちゃ
「……嫌がらせねぇ…おまえはそう感じるんだな」
冷たい仁坂の声を聞いて、捩っていた身体を正面に戻すと、頭上で繋がれた手錠がベッドヘッドのポールを転がり、ガラガラ音が鳴った。
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