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25 こんなに待たせて、LINEで連絡なんて、悪いよな… 俺は怜の携帯を鳴らした。 呼び出し音はそう長く鳴らず、怜は落ち着いた声で俺の名前を呼んだ。 「陽海?」 「ぁ…ご、ごめん!今って大丈夫?」 「うん、大丈夫。流石にもう仕事中じゃないよ」 クスッと笑う怜。 壁掛けの時計を見上げたら、時間は10時半をまわっていた。 「遅くにごめん」 「ずっと待ってたから…俺は嬉しいよ。もうかかって来ないかと思ってたんだ」 「いやっ…流石にそんな事はしないって」 「うん。陽海はそんな事しないよね」 「怜…」 「何かあった?」 「あ〜…何で?」 「陽海はすぐ顔に出る。」 「顔見えないじゃん」 「ハハ、声にも出てるって事じゃない?」 俺は携帯を耳に押し当てたまま俯いた。 ポケットでひしゃげてしまったピアスの箱を引っ張り出す。 「いや、何にもない。ちょっとここ最近、忙しくて…連絡出来なくて…」 「…そっか…それで…返事の話…今、する?」 怜は優しく問いかけてくる。 俺は形の悪くなったピアスの箱を手の中で見つめながら、ぼんやりと呟いた。 「明日…会えるかな?」 「…もちろん」 怜は、仁坂のように怒鳴る事も、急かす事もなく、静かに返事を返してくれた。 「じゃ、明日また時間、連絡するよ」 「うん、わかった。」 「おやすみ」 「陽海?」 「ん?」 「…好きだよ…おやすみ」 「おっおやすみっ」 不意打ち 静かに携帯をテーブルに置く。 何本も転がった空き缶と、ひしゃげたピアスの箱と、好きだよと囁かれた携帯電話があまりにカオスで苦笑いが漏れた。
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