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26 昨日は泥酔。 洗濯は早起きして干した。 少し緊張しているせいか、いつもと違う雰囲気のネクタイを選んで出て来たのを今更ながらに後悔している。 怜と仕事終わりに会う。 話は付き合って欲しいと言われたことへの返事だ。 昨日は仁坂のことがあったから、酒の力を借りて電話したものの…。 怜と正式に付き合うなんていう絵面が全くしっくり来ないから困る。 大学時代の怜は優しかった。 でも、常に彼女が居た。 俺は、特別な存在ではないんだと幾度となく感じたもんだ。 そんな女を切らさない怜が、今更、ゲイの俺と付き合う必要があるんだろうか? まぁ…そんな事言い出したら仁坂の方が意味不明だよな…。 アイツこそ女を相手に商売してるわけだし、彼氏?つーか、俺みたいに冴えないヤツなんか相手する必要ないんだから。 俺は駅のホームで頭をブンブン振った。 リュックの肩紐をギュッと握り唇を噛む。 何でいちいち仁坂が出てくるんだ。 あんな最悪なヤツ。 それより怜の事…。 本当に俺なんかで良いのかな…。 電車がホームに流れ込んでくる。 長く伸びた前髪で目を覆うようにしている俺は、強い風で乱れた髪を直した。 小さなビルに入り、自分のデスクにリュックを下ろす。 「はよ〜」 同期の本郷幸太(ホンゴウコウタ)が眠そうに隣の席で大欠伸をしている。 「寝不足?」 コートを脱ぎながら問いかけると、また欠伸をしながら本郷はぼやいた。 「新しいクエスト、ぜんっぜんクリア出来ないんだよ、もう気付いたら朝っ!あんなクソゲー久しぶりだわ!」 「ハハ、本郷がクリア出来ないなんて事あるんだね。」 本郷は超がつくゲーム好きだ。 俺が椅子に座ると、ペタンと身体をデスクに寝かせ、本郷が俺の顔を下から覗き込む。 「山田だってここ最近寝不足だったじゃんか。今日はなんかすげぇ浮腫んでね?」 俺はギクッと引き攣り笑いして、「飲み過ぎた。宅飲みは良くないね」と誤魔化した。 「それにしても山田ってさぁ、何で前髪いっつもそんなもっさりさせてんの?」 本郷の不思議そうな質問に、前髪を摘んでみる。 「だって、お前、結構イケメンだぜ?顔出していきゃ女なんかすぐ出来るって!」 入社してこのかた浮いた話がない俺を心配する本郷。 彼は根っからの陽キャで、合コンとか集まりが大好きだ。何度も誘ってくれたけど、参加した事はない。 「ありがとう。そんなの本郷しか言ってくれないよ。」 「はぁ〜?んな事ないって!あっ!!今日、ちょうど合コンあんだけどさっ!どう?行こうぜっ!」 肩をガシッと抱かれ、ハハッと苦笑いしてしまう。 「ごめん!今日は大学の時の友達と会う約束があるんだ」 「へぇ、大学ん時のダチかぁ…んじゃ、しょーがねぇな」 ポンポンと肩を叩かれて椅子のキャスターを使って自分の席にシュッと戻る本郷。 俺は肩を竦め、「悪いな」と言ったら、隣の席からグッと親指を突き出し、「気にすんな!また次な!」と相変わらず陽キャな返しをくれた。
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