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28 ダメだ…頭が混乱してる。 何で? 何で仁坂が会社まで来てんの? 完全他人の本郷に、"切羽詰まった感じ"なんてバレてんの、全然仁坂らしくない。 怜と何処で会うか分かったら、仁坂はどうする気なんだよ。 「陽海?…大丈夫?顔色、良くないよ。」 「だ、大丈夫」 「クマも酷いし…ちょっと休んだ方が良いな。」 「最近、ちょっと寝不足で…本当大丈夫、ごめん」 「近くのホテル…部屋とってあるんだ。夜景が綺麗な場所でね…」 「怜…」 「答えはそっちで……シャンパンでも飲みながらにしたいな」 俺は俯いた。 こんな素敵な男からの告白、受けない方がどうかしてる。 仁坂は俺を玩具にした男だ。今更…。 会うのは…ジッポを返す時だけで良い。 俯いたまま、呟いた。 「うん…移動…しようか」 怜がどんな顔をしているのか分からない。 分からないままで良いと思った。 席を立ち、個室を出る。 怜は、会計は俺が持つから先に出ているように俺を促した。そこど押し問答するのも恥ずかしいだろうと、俺は一旦店を出た。 店を出て、夜風に吹かれる。 もうすっかり冷え込んで寒かった。 コートを引き寄せ、首を竦めた時だ。 背後からグッと腕を掴まれ、乱暴に振り向かされる。 そこには、息を切らせた仁坂が立っていた。 膝に手をつき、ハァハァと息を吐く。寒いはずなのに、彼の息は白く、キラキラした汗が、顎先に流れて落ちた。 「にっ仁坂っ!!」 「ハァ…ハァ…やっぱ…やっぱ返して」 「は、はぁ?何?…あぁっ!ジッポ?待って、今持ってる」 「ちげぇよっ!!ピアスっ!」 「…だっ…だってアレはいらないから…やるって言ったじゃん」 ギュッと拳を握って俯く。 そこへ怜が店から出て来た。 「陽海?…あぁ…もしかしてさっき電話で言ってた方?」 怜が俺と仁坂の間に立つ。 「…あんたか、大学ん時の」 「初めまして…宮沢怜です。」 怜は仁坂に握手を求めるように手を差し出した。 仁坂はそれを無視する。 握られなかった手をジッと見下ろす怜。 「…陽海に何か用ですか?」 怜は苦笑いしながら問いかけた。 それなのに、仁坂はフンと鼻で笑った。
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