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仁坂は誰もが羨む美貌の持ち主で、キスをされた俺に不快感はなく、恐ろしくも、そのキスが気持ち良いとさえ感じていた。
そもそもの間違いはそこからだったんだ。
「嫌がんないの?」
「ぃ…嫌がる?」
「続き…する?」
仁坂は俺の下半身を簡単に脱がせて、サイドテーブルの引き出しから出したローションを太腿の間に垂らした。
「にっ仁坂?!」
「大丈夫、挿れたりしねぇって。一緒に気持ち良くなるだけだよ。」
クルンと裏返されると、黒い洒落たシーツにバフッと顔面が埋もれた。シーツからは仁坂の良い匂いがして、俺は一瞬何も考えられなくなった。
ヌルッと足の間に熱くて硬いモノが挟まり、俺は恐る恐る後ろを振り返ると、琥珀色の瞳が薄く目を細め、ギュッと背後から俺を抱きしめた。
グチュクチュッとローションが粘る音がして、耳元で仁坂が息を荒げながら、低い声で囁いた。
「足もっと閉じろよ」
俺は足も閉じたが、目も力一杯閉じた。
官能的な囁きに後ろから打ちつけられる仁坂の熱が俺の裏筋に当たり、擦られ、もう完全にセックスをしている気分だった。
パンパンと肌を打つ音も、リアルに興奮を煽り、自分でも何が何か分からないままに射精していた。
黒いシーツに濃い白濁が滴り、ハァハァと息を切らす俺は、涙ぐんで仁坂を振り返った。
仁坂は思いのほか、優しく俺を抱きしめて耳に向かって囁いた。
「めっちゃ濃いの出たじゃん」
俺は、ハッとして、近くにあったティッシュでシーツを乱暴に拭き、学生服のスラックスをいそいそと履くなり、仁坂の家を飛び出した。
家に帰ってから、自分がされたのは素股だと分かると、全身の血がブクブクと泡立って、どうしていいか分からなくなった。
黒いシーツに、点々と飛び散った濃い白濁が脳裏にこびりついて離れない。
後ろから俺に密着して腰を振る仁坂が、何度も浮かんでは消えた。
そして、その日、当然のように俺はオナニーをした。
更には、男同士のセックス動画を漁り始めた。
あの日から
仁坂とよく目が合うようになっていた。
俺は
期待していたのだ。
またあの美しい男に、いやらしい事をされないだろうかと。
それは簡単な始まりで
俺の性を歪めるには、十分過ぎる相手だった。
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