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「すみません、先輩……。ムリです……」 「なんで? 藤野さん、付き合ってる人いないんでしょ」 「そういう問題じゃないんです……」 「じゃあさ、今度の週末、一回だけでいいから一緒に遊びに行こうよ。俺、ほんとに藤野さんのこと好きなんだよね」  笑顔で迫ってくる先輩には、全然話が通じない。  どうしたらいいのかわからず震えていると、後ろからぐいっと誰かに肩をひかれた。 「すみません、先輩。藤野は今週末、俺とデートの約束してるんです。だから、あんまりしつこく誘うのやめてもらっていいですか?」  トンッと背中が何かにぶつかって、声変わりしきっていない、少し掠れた声が耳に届く。  驚いて振り向くと、佐々が私の肩に手をのせていた。 「なんだよ、佐々。邪魔すんな」  私の手を離した先輩が、怪訝に顔をしかめる。 「邪魔なのは、藤野の帰り道塞いでる先輩じゃないですか」 「は?」 「先輩、最近よく藤野に付き纏ってるみたいだけど、こいつ、あきらかに困ってますよね?」  佐々がそう言って、先輩にスマホを見せる。そこには、先輩が嫌がる私の手を無理やり引っ張っている動画が撮られていた。
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