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「あんまりしつこいと、学校に報告しますよ。先輩、高校は推薦狙ってるんでしょ」
同じテニス部の佐々は、先輩の私への付き纏いの異様さに気付いていたらしい。
佐々の言葉に、先輩は不服そうに私たちの前から去った。
「またあの人になんかされそうになったら、いつでも俺のこと頼っていいから」
先輩がいなくなったあと、佐々が私ににこっと笑いかけてきた。
佐々の笑顔に心臓がキュッと縮まって、胸がドキドキする。でも、それは、男の人や先輩に感じた恐怖心とは違う。
佐々の手は、先輩に助けられたあとも、私の肩に触れていた。だけど、私の身体は震えなかった。鳥肌も立たなかったし、冷や汗も止まっていた。
佐々の笑顔と変声しきっていない掠れた声は、私を安心させた。
それからしばらく、佐々は先輩から私を守ってくれた。佐々が近くにいてくれたおかげで、先輩からの付き纏いはなくなった。
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