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 佐々の言う「運命」の相手は、高校で彼のクラスメートになった水田(みずた)奈帆。  佐々は高校の入学式の日、奈帆と再会したらしい。  ふたりの最初の出会いは春休み。中学時代の友達と遊びに行った佐々は、ファーストフード店の椅子にスマホを置き忘れてしまったらしい。    佐々の忘れ物に気付いて追いかけてきてくれたのが、佐々達の隣のテーブルに座っていた奈帆。  佐々はファーストフード店にいるときから、隣のテーブルにいる奈帆のことを「可愛い」と思っていたらしい。そんな奈帆との再会に、佐々のテンションは上がっていた。  もともと人なつっこい性格の佐々は、あっという間に奈帆と仲良くなって。高校に入ってから半年も経たないうちに、ふたりは付き合い出した。  ふたりが付き合い出したとき、私は表向きには「おめでとう」と笑いながら、内心でめちゃくちゃ奈帆に嫉妬した。  私が触れられても恐怖を感じない唯一の男の子。私にとって、佐々は特別。だけど、佐々にとっての私はそうじゃなかった……。  守ってくれたのも優しくしてくれたのも、私への好意じゃない。ただ、佐々が困っている人を放っておけない性格なだけ。  私の特別(佐々)は、あとから現れた運命(奈帆)にあっさりと奪われた。  そんな私の気持ちなんて知らない佐々と奈帆は、あるとき私と翔琉くんを遊園地でのダブルデートに誘ってきた。  どうして私が、奈帆の幼馴染の翔琉くんとダブルデートさせられるのかわからなかったし、仲良さそうにくっついて歩く佐々と奈帆の姿を見せつけられ続けるのは、正直言って、拷問だった。
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