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 ダブルデートに誘われた理由が判明したのは、最後にふたりずつに別れて観覧車に乗せられたとき。  男の人が苦手な私は、ほとんど初対面に近い翔琉くんと狭い空間に閉じ込められて、ものすごく緊張していた。  観覧車が一番上に上がる頃には、閉塞空間での緊張は限界に達していて、手の震えを抑えるのに必死だった。翔琉くんは、そんな私を高所恐怖症なんだと思ったらしい。 「ごめんね。無理やり付き合わせて、勝手に浮かれて」  観覧車を降りたあと、私をベンチに座らせた翔琉くんは、申し訳なさそうに謝ってくれた。それから、ものすごく緊張した顔で私に告白をしてきた。 「実は今日のダブルデート、俺が奈帆と佐々に頼んで藤野さんのこと誘ってもらったんだ。俺、入学式のときに一目惚れしてから、ずっと藤野さんのことが気になってて……。そしたら最近、幼馴染にできた彼氏が、藤野さんと友達だっていうじゃん? これは、告白するチャンスっていうか、運命が引き合わせてくれたのかもって思っちゃって……」  翔琉くんの言う「運命」は、ずいぶん軽くて、私は少し苦笑いした。でも、私に気持ちを伝えてくれる翔琉くんの一生懸命さは嫌じゃなかった。
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